緒 言
一個人が過去に投稿したツイートを投稿時のまま公開するのは、私の試みが世界初かもしれず、最後にもなりかねない。
おそらくそのはずで、投稿済みのツイートなるもの、取捨選択加筆訂正削除等々といった加工なしには、普通、公開しうるものであるとは思えない。女性の外出には念入りな化粧が不可欠であるように、である。
2020年6月3日現在、吾がツイートのフォロワーは3名、フォロー中のツイートはなし。
映像やハッシュタグをつけるとインプレッションやエンゲージメント(現代の隠語の類だ)が増加することは実験済み。
同じツイートを映像なし、映像付きでツイートしてみると簡単に確認できる。
しかし、映像やハッシュタグを付ける頻度は急減している。
5月に限ると、最後の映像付きツイートは2020年5月15日「コロナ対策は全て生ぬるいが……」。
最後のハッシュタグ付きツイートは2020年5月12日「申請者だけに #10万円給付……」。
5月28日(3:11 2020/05/28)に
習近平中国はもはや疑いようもなく現代版ナチス
この判断はデカルトのdoute hyperboliqueほど
誇大でもなければ
非現実的でもない
香港の邦銀関係者が顔を隠さねば香港情勢に関するインタビューに応じられないという事態は尋常なものではない
ウイグル人強制収容所に言及することさえ許されない現実
の如きツイートを投稿した時点で、私はいわば、ツイッターを《個人的》備忘録として利用する意図を自分自身に宣言したのである。
"doute hyperbolique"が一体何のことやら理解できるツイッター利用者は少数であろうが、己が備忘録に外国語を交えようと交えまいと、「ツイートをより多くのTwitterユーザーに届けましょう」などというツイッター社の誘いなど馬耳東風の境地に至ったものには、私の勝手でしょ、ということになる。
さほど有名とも思えぬ《有名人》の「反対の根拠や己が思想・信条・考え」を一言も記さない「#〜に反対します」だけのツイートに数万の「いいね」や「リツイート」が集まるというツイッター界[Twittersphere]は、真っ当な世界とはかなり距離を置いた世界であると見做しておくのが賢明であろう。
時には動画を添えることもできる備忘録としてのツイッター利用方法が確立した私には、もはや、より多くの反応を求めて映像やハッシュタグを積極的に付けることに意味を見出せない。私にとってツイッターはもはやソーシャル・メディアではないのである。
一度投稿したツイートは一説によると、自ら削除しない限り《いつまでも》(いつまでも、とは一体、いつまでのことか)残るとも言われるが、一説を全面的に信ずるわけにも行かない。いつか消滅することになるだろう、くらいのことは承知の上で、紙の備忘録では添えたくても添えようもなかった映像を、ツイートの背景の備忘となるような静止画、動画に限り、添えようとも思う。
それにしても、生前に投稿したツイートがすべて死後も残り続けるとしたら……。
序に一言。
こんなツイッター界の大立者、恐るべき権力を握る老病者トランプのツイートはやがて、災厄を撒き散らし続けるこの老病者の病理を解き明かす不可欠の資料として詳しい分析・研究の対象となる。
第一章は2020年5月1日から5月31日まで一ヶ月間のツイート。
第二章は2019年7月18日から9月30日までの、ツイート開始から約二ヶ月半の間のツイート。
ツイートに付して投稿した画像のうち、なるほど、と思えるであろうものを二つだけ載せた。
ツイートの中には、「バズった」と言えそうなものもある。約79600インプレッション(2020年5月末時点)、96「いいね」、23「リツイート」。2020年4月13日の「西に #吉村寝ろ ……」なるツイートである。格別な感想はない。
確認してみたが(2020年6月3日現在)、私が投稿したツイートで、ツイッター社によって削除されたものはなさそうだ。従って、ここに公開する私の過去のツイートはウエッブ上で確認できるはずである。
次のような推敲の不手際も、敢えて修正しなかった。
【ゲスの根性】15:50 2020/05/26
下種スの根性が丸見えになる瞬間がある
削除したツイートがあるのかないのか、は私しか知りえない情報であるが、削除したものはない、と述べておくしかない。
全体に目を通せば、ツイートを始めた最初の二ヵ月半と直近一ヶ月の違いは明白である。
【.............】はツイートのいわば主題。公開するに当たって、参考のために追加した。数字は投稿した日時。いずれもツイッター画面には表示されていない。
誰のどのようなツイッターであれ、厳しい字数制限のあるツイッターを味わい楽しむには、恐らく、それなりの知識なり機転なり想像力が求められる。
例えば、私の次のツイートの場合、立川志の輔が文化放送「志の輔ラジオ」の中で、漫才師と漫談家をすべて「~先生」と紹介していたことを下敷きにしている。漫才師や漫談家が「〜先生」に祭り上げられたら一巻の終わり、という含みだ。
歴々たる漫才・漫談の師匠連を「〜先生」と呼称することは、不快にして汚らしいおちょくりに等しい。果たして志の輔は「志ん生先生」と言えるか。わずかなりとも正気が残っていたら、言えようはずもない。いやしくも落語の世界に身をおくものが、志ん生を汚らしくおちょくることなどできるわけもない、ということだ。惣領弟子の志の輔がこのざまでは、「談志先生」、あの世でもおちおち眠っても居られまい。
このツイートからそうした裏事情を読み取れる人は極めて稀だろう。
【センセー】14:12 2020/05/28
文化放送「志の輔ラジオ」はこの数週
落語と漫才を放送している
4.12は「トップ・ライト」センセー
5.3は「牧野周一」センセーの漫談
5.10は「人生幸朗・生恵幸子」センセー
5.17は「海原お浜・小浜」センセー
「センセー」に祭り上げられたら一巻の終わり
志の輔センセーにはお分かりになるまいが
次のツイートは、お馴染みの落語「長命」を踏まえている。従って、さほど分かりにくいツイートではあるまい、とは書いた本人の勝手な言い分である。
【安倍晋三は優秀だ】2:50 2020/05/28
英国、貧すれば鈍すの悲惨な典型
自粛無視の数百キロ移動ドミニク・カミングス
自粛無視の黒川賭け麻雀と酷似
英国ではバカ総理が最側近を擁護
英国、惨め、落ちたくはないものだ
安倍晋三以上に無能な
英国首相
合衆国大統領
ロシア大統領
ブラジル大統領
習近平
安倍晋三は優秀
「おれは長命だ」
以下の如き、読む側がどう知恵をめぐらせても不可解であるはずのツイートが二つだけある。難解きわまるツイートは他にも幾つかあると思うが、そうしたツイートも以下の二つのツイートほどは不可解ではなかろう。
【三島由紀夫】2020/05/0702:30
三島由紀夫のことだ
【介錯つきの自死】2:27 2020/05/07
介錯つきの自死などありえない
ツイッター社による何らかの規制・干渉らしきものを薄々感じたことがある。投稿してかなりの時間が経過してもそれが表示されない、まったくインプレッションがない、という事態である。
この二つのツイートはその辺りの規制・干渉の有無と程度を調べる目的で投稿したものだった。二日ほどすると、ほどけた、という感じを得られた。
殆どの日本人には意味も意図も不明に思えるに違いない以下のツイートは、北京語「加油」(頑張れ)(jia1you2)の広東語音を投稿したもので、数字は声調である。
【香港頑張れ】2:50 2019/09/01
ga1yau2
ヒトラーバンザイ、という類の投稿を続けると恐らく何らかの規制がかかる。私の場合、漠とではあるが感じられた規制・干渉がいかなる内容の私の投稿を理由としてなされたのか(あるいは、何の規制も干渉も為されなかったのか)、私には思い当たる節が全くない。吾がツイートは、全体に、権力(者)に対しては、極めて辛辣であることは否定するものではないけれども。
それにしてもこれほどの数のツイートをよくも書き、よくも投稿したもので、その上そのツイートを洗いざらい公開するとは、我ながら大胆不敵にして大した度胸ではないか。
そう、出来ないことなのだ。
よほどの度胸と覚悟と……なかりせば。
(緒言 了)
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